2011年12月04日

探偵はBARにいる

〈2011年映画感想29本目〉

探偵はBARにいる
2011年 日本 125分
監督:橋本一
脚本:古沢良太,須藤泰司
配給:東映
出演:大泉洋,松田龍平,小雪,西田敏行,カルメン・マキ,竹下恵子,吉高由里子,石橋蓮司,本宮泰風,田口トモロヲ,松重豊,高嶋政伸

 東直己『バーにかかってきた電話』を原作としたハードボイルド・アクション映画。〈ススキノ探偵〉シリーズの第1作目『探偵はバーにいる』が原作ではないのがややこしい。舞台が札幌の繁華街ススキノで,主演が大泉洋ということもあって北海道では首都圏の主要劇場を上回る集客数となったそうです。シリーズ化も予定されているとのことで今後の展開が楽しみです。

 東直己〈ススキノ探偵〉シリーズの映画化第1作目。原作を割と忠実に映画化している印象があります。何と言っても,〈俺〉役の大泉洋が実にはまり役。無頼を気取りながらも本質的には人が良い〈俺〉は最早大泉洋の印象なしには語れません。但し,小説では特に気にならなかった暴力場面が頻出するのはやや辟易。流血など痛々しい表現が多く思わず目をそらしてしまうこともありました。原作よりも過剰な演出も多いです。それ以外は概ね満足。原作どおりに基本的には〈俺〉の語りで物語は進みます。この軽妙で諧謔に満ちた大泉洋の語り口が実に良いのですね。原作同様にミステリィ要素は薄め。一応は〈俺〉に依頼をした女性の謎が物語の主軸となりますが,最初の電話の声だけで殆ど予測がついてしまうのは興醒め。尤も,それもある程度は計算の内なのかもしれませんけれども。原作ではそれ程出番が多くない高田は〈俺〉と終始行動を共にする相棒となっています。また,題名通りにバーが舞台となる場面も多く,特に〈俺〉の本拠地とも言えるケラー・オオハタの雰囲気が最高に素晴らしい。寡黙なマスターが〈俺〉に黒電話を差し出す場面は大人の格好良さを存分に醸し出しています。やはり,この作品の魅力のひとつは時代性にこそあると思うのですよね。但し,原作では1980年代となっていますが,本作で〈俺〉と高田の愛車が光岡自動車のビュートということを考えると1993年以降ということになってはしまうのですけれど。また,舞台となる札幌はススキノが実に魅力的。雪のススキノでの格闘場面が映えます。カルメン・マキによる主題歌も雰囲気があって似つかわしい。このあたりの雰囲気への拘りこそが作品への愛情を感じさせます。

 上述のように〈俺〉役の大泉洋はこの上もないはまり役。情けなさを感じさせながらも締めるところはきちんと締める〈俺〉の魅力をふんだんに醸し出しています。口では悪態をつきながらも依頼人の身を本気で案じる姿が素敵。最後の場面で間に合わないことを知りながらも小樽から札幌へ向かう電車の中での仕草にたまらない魅力を感じます。〈俺〉の相棒である高田役は松田龍平。気怠そうな演技をさせたら天下一品ですね。空手の師範代ということで格闘場面では〈俺〉よりも寧ろ主役の趣があります。窮地に陥った〈俺〉を助けに向かうのに必ず少しだけ遅れてしまうのが御愛嬌。原作よりもかなり印象が強いです。事件の中心となる沙織を演じるのは小雪。笑顔が妙に怖く思えるけど,まあ合っているといえば合っているのかな。役柄上あまり魅力は感じないんだけどね。その沙織の元夫で事件の発端ともなる殺人事件の被害者役は西田敏行。こちらは出番は多くないにも関わらず存在感があります。大物役には最適だよね。個人的に結構気に入ったのが〈俺〉を拉致した男役の高嶋政伸。不気味な雰囲気が素晴らしく素敵。最初は高嶋政伸が演じているとは分かりませんでした。まさに怪演という言葉が相応しいかもしれません。男色の新聞記者・松尾を演じる田口トモロヲもいいですね。全般的に配役はどれもこれも嵌っていました。原作を読んだ人間であれば納得できるかと思います。何はともあれ,やっぱり大泉洋の存在感が素晴らしいけれどね。

 原作好きとしては実に理想的な映画化作品だったと思います。雰囲気も配役も存分に酔わせて貰いました。原作では多少気になる冗長な部分は微塵も感じられなかったのも大きい。その分,過剰な暴力場面はありましたが,一応は許容範囲の内でしょう。個人的にはもう少し控えめにして欲しかったけれどね。原作未読でミステリィ要素を期待すると裏切られるかもしれませんが,それでも〈俺〉と高田の魅力を堪能できる筈。今後のシリーズ展開を楽しみに待ちたいと思います。札幌を走る探偵の姿と再会できる日を待ち望んでいます。

 余談。冒頭で〈俺〉が駅から突き落とされる場面が拉致されて雪に埋められるに変更されていました。冬の札幌を印象付けるには良い変更だったと思います。ただ,あの雪から這い出てくるのは絶対に無理だと思うけれど。
posted by 森山 樹 at 11:33| Comment(0) | TrackBack(1) | 感想(映画館)
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Excerpt: 札幌在住の作家・東直己の「バーにかかってきた電話」をベースに映画化。札幌を舞台に2人の探偵がとある依頼から危険に巻き込まれていく様子を描いたクライムミステリーだ。主演は『アフタースクール』の大泉洋と『..
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Tracked: 2011-12-04 13:16