2011年12月26日

コクリコ坂から

〈2011年映画感想32本目〉
コクリコ坂から
2011年 日本 91分
監督:宮崎吾朗
脚本:宮崎駿,丹羽圭子
配給:東宝
出演:長澤まさみ,岡田准一,竹下景子,石田ゆり子,柊留美,風吹ジュン,内藤剛志,風間俊介,大森南朋,香川照之

 スタジオ・ジブリによるアニメーション映画。劇場に足を運んでみる作品としては昨年の『借りぐらしのアリエッティ』に続く2作目となります。監督が『ゲド戦記』の宮崎吾朗ということで鑑賞前は大変に不安だったことは否めません。しかし,思い入れが深い『ゲド戦記』とは異なり,原作には馴染みがない分,映画そのものだけを見て楽しむことが出来たように思います。

 1963年の横浜を舞台に文化部部室棟カルチェラタンを護る為に奮闘する少年少女の姿を描いた青春映画です。勿論,1963年という時代に自分は生を得ていないのですが,何処か懐かしい雰囲気が漂っているのが不思議。それは今ではファンタジィになりつつある昭和という時代そのものに寄せる郷愁なのかもしれません。何はともあれ,物語の中心となるカルチェラタンが実に魅力的。この老朽化した文化部部室棟の取り壊しに奔走する水沼史郎と風間俊の想いが美しい。或いはそのふたりの熱意に最早自分には過ぎ去った青春への憧憬を感じて止みません。このカルチェラタンを護る為の運動を物語の縦軸とするならば,物語の横軸は風間俊と主人公である松崎海との間に秘められた出生の謎であると言えます。カルチェラタンを護る運動の最中に出逢い,互いに惹かれあうふたりが実は生き別れの兄妹だったという設定はありがちではありますが,やはり切なく美しいものを感じさせます。だからこそ,結末で明かされる事の真相にやや御都合主義的なものを感じざるを得ません。尤も,誰も傷つくことなく幸せな結末を迎える為には,真相をああする他はなかったのでしょうけれども。個人的には物語の中で薄々予想していて,一番興醒めだなと思われる結末を迎えてしまった気がしてなりません。それでも,なお,誰もが幸せとなれる終わり方に安堵してしまったことは事実ではありますけれども。必ずしも不幸な終わり方を望んでいるわけではないのですが,やや安易な解決方法だったなという気がします。尤も,これは原作に起因する設定かもしれませんので映画の脚本ばかりに文句をつけることは出来ません。少なくとも自分ならば此処まで御都合主義な展開にはしなかったと思います。結末に到る展開や演出は実に自分好みだっただけに安直という他ないまとめ方が大きな瑕疵として目立ってしまいました。それが残念でなりません。

 長澤まさみが声優を務める松崎海こと通称メルはコクリコ荘を切り盛りするしっかり者の女の子。特に個性的ということはないのですが,実に真面目で好ましく思えます。風間に心惹かれて行く様子も実に可愛らしかった。それだけに自分との出生の秘密を知った風間から疎遠にされたことを感じた時の苦悩を辛く思います。その風間は生徒会長である親友の水沼と組んでカルチェラタンの保護運動の中心的な役割を担います。講堂での激論を戦わせる姿が格好良かった。新聞部として生徒間にカルチェラタン保護の機運を高めることに成功する立役者でもあります。この舞台となるカルチェラタンの雰囲気が実に良いのですよね。雑然とした中に知性と熱意を感じさせる,まさに理想の文化部活動の拠点ということが出来ます。作中ではメルの提案によって大掃除が為されるのですが,大掃除前も大掃除後も,どちらの姿も魅力に溢れています。コクリコ荘と並ぶ物語の中心的な場所として成功しているように思います。脇役陣ではメルの祖母が素敵な老婦人といった趣で存在感を醸し出していました。コクリコ荘を切り盛りするメルを見守る優しい視線がたまらなく素敵。礼儀に厳しい面も古き良き日本の婦人の姿を想起させます。メルの妹である空も可愛かった。相変わらずジブリ映画に登場する女の子は誰もみな好みですね。漫画的な表現が為されていないことに逆に好ましさを覚えるのかもしれません。

 一時期のジブリ映画はあまり好みではなかったのですが,前作『借りぐらしのアリエッティ』に引き続き本作はかなり自分好みの作品に仕上がっていました。正直なところ,監督が『ゲド戦記』の宮崎吾朗ということで,全く期待はしていなかったので,良い意味で裏切られたような部分もあります。それだけに安易にまとめられた結末が残念でなりません。それでもなお,少なくとも次回作への期待を煽られるに値する作品であったことは事実。カルチェラタンを護る為に奔走する少年少女の充実した青春の日々に郷愁と憧憬を感じる作品でした。
posted by 森山 樹 at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想(映画館)
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