2012年12月15日

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

〈2012年映画感想4本目〉
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
2012年 日本 95分
監督:庵野秀明
脚本:庵野秀明
配給:ティ・ジョイ,カラー
声の出演:緒方恵美,林原めぐみ,宮村優子,坂本真綾,石田彰,三石琴乃,立木文彦,清川元夢,山口由里子,長澤美樹,子安武人,優希比呂,沢城みゆき,大塚明夫

 〈ヱヴァンゲリヲン新劇場版〉4部作の第3作目。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の時にも書きましたが,自分がまともに〈新世紀ヱヴァンゲリヲン〉に接するのはこの新劇場版が初めてとなります。但し,当時読んでいなかった漫画版は最新巻まで一応読んだので,以前よりはそれなりに知識がある筈。その意味では漸く人並みに〈新世紀ヱヴァンゲリヲン〉を楽しめる立場となったのかもしれません。
 なお,今作の感想はいつも以上にネタばれ満載です。これから見る人はその点を承知してください。

 満を持して公開された〈ヱヴァンゲリヲン新劇場版〉4部作の第3作目です。公開直前まで殆ど情報が提供されずに期待感だけが徒に高まっていましたが,鑑賞後には事前に情報を出すことがほぼ不可能だった理由が良く分かりました。どの部分を見せたとしてもネタばれに繋がってしまうのだものなあ。そして,過去2作に比べて,所謂TV版や旧劇場版とは全く異なる作品であるということは事前に宣言されていましたが,まさか此処まで予想出来ない展開になるとは思いませんでした。何しろ,今作の舞台が前作最後から14年後というのですから,シンジでなくとも唖然茫然してしまうというもの。前作の最後で綾波レイを救出することが出来ず,サード・インパクトにより地球上の人類がほぼ壊滅状態になった世界というのですから尚更です。また,前作においてNERVに所属していた葛城ミサトや赤城リツコを中心に,式波・アスカ・ラングレーや真希波・マリ・イラストリアスといったエヴァンゲリオンのパイロットたちを含む面々はNERVに対抗するヴィレなる新組織を作り上げています。一方でNERVには碇ゲンドウや冬月コウゾウ,アヤナミレイ(仮称),渚カヲルらが所属。これまでとは全く異なる世界の中での〈ヱヴァンゲリヲン〉の物語が織り成されます。今回の山場となるのは序盤での空中戦艦AAAヴンダーとネーメジスと呼称される使徒にも似た謎の敵との戦いとセントラルドグマ最深部におけるロンギヌスの槍を巡る攻防戦のふたつ。全般的に陰鬱な物語ではありますが,戦闘時に際しての高揚感はやはり素晴らしいものがあります。特にAAAヴンダーの発信の場面はこれだけで満足してしまえる程。旧作を彷彿とさせる場面が随所に見られるのも楽しい。但し,物語そのものはシンジ視点による絶望的なものにならざるを得ません。その意味での爽快感は皆無に等しいものがあります。次作へ続く関係上,今作の結末も決して明るいものではありません。この辺りは好みが分かれるところかと思われます。個人的には今作だけで十分に楽しめましたが,本当に今作を評価するには次作で如何にまとめられるかが肝要に思います。

 上述のようにサード・インパクトの要因となってしまい,更に綾波レイまでも失ってしまったシンジの姿が辛い。カヲルとの触れ合いにより多少は回復したのでしょうけれど,そのカヲルさえもゲンドウの奸策により使徒に落とされ,最終的に死亡する始末。今までであれば,彼を庇護してくれていたミサトを始めとするヴィレの一同からも冷淡で敵対的な扱いを受けているのが救われません。それでもミサトはシンジの首に装着したDSSチョーカーを爆破するのを躊躇うあたりにかつての面影を見出すことが出来ますけれど。前作よりも14年後ということでミサトやリツコは相応に年齢を重ねていますが,アスカやマリは嘗ての姿のまま。これは今作にて初めて明かされた“エヴァの呪縛”と呼ばれる影響によるものとのこと。但し,外見は以前同様ですが,内面的には14年の時間を経て成長した節が見受けられます。マリはアスカ同様に外見はそのまま。謎めいた言動は多いのですが,相変わらずその正体は語られません。陰鬱な物語の中で唯一と言っていい明るい性格がある意味で救いともなっています。眼鏡がちょっと変わったかな。ミサトはAAAヴンダーの艦長として冷徹な判断を下す有能な軍人といった感じ。一番雰囲気が変わったように思いますが,保護者として導いていたシンジの行為がサード・インパクトを引き起こす結果となったことを考えると,それも仕方がないところか。但し,その内面はいまいち計り知れないものがあります。過去2作で思わせぶりな言動に終始していたカヲルはあっさりと退場。尤も,その出自を考えると次作での再登場は充分に考えられます。寧ろ,このまま退場してしまう方が不自然。個人的にはシンジと将棋を指す中で物語の背景を語る役目を担った冬月の存在が印象的でした。渋い立ち位置です。一方でゲンドウは相変わらずの人でなしぶりが素敵。それでも前作までは多少はシンジを気にかける様子も見受けられたのになあ。加持リョウジの出番が全くなかったのも不思議。前作ではある程度重要な立ち位置にあったと思うのですけれど。新キャラではやはり鈴原トウジの妹のサクラが印象的。普通に可愛いよね。あまり重要な存在にはなりそうもないけれども。

 謎が謎を呼んでいる,と言うよりも前作で提示された謎が解決されぬままに更なる謎が増えていると言った印象が強いです。『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』と発表された次作で全てがきちんと明かされるのかなあ。前作の“ネブカドネザルの鍵”や今作での“アダムスの器”など思わせぶりな言葉に想像力が刺激されてしまいます。また,カヲルを第1使徒から第13使徒に落とすことでフォース・インパクトが発動するように仕向けたゲンドウの思惑も不明なまま。上述の加持や或いはトウジ,ケンスケ,ヒカリといったシンジの友人たちの消息も気になります。何よりも結局NERVとヴィレしか描かれていないので世界が現在どうなっているのかが全く分かりません。ほぼ文明崩壊に近い状態にはあるのだろうけれど,それならそれで何故AAAヴンダーや幾つか登場したエヴァンゲリオンの開発が出来たのかが謎となります。そもそもNERVに至っては実質上ゲンドウとコウゾウ,アヤナミレイ(仮称),カヲルしか所属していないようなものだしね。このあたりを含めて全ての謎がきちんと完結篇で解明されることを心から望みたいと思います。そして,なるべく早めに完結篇が公開されるように願います。

 余談。AAAヴンダー発進時のBGMが『ふしぎの海のナディア』の万能戦艦ν-ノーチラス号発進の音楽で思わず聴き入ってしまいました。やっぱりすごく格好いい楽曲ですよね。こういうお遊びはやり過ぎなければ,素直に楽しめます。残念だったのは一番大好きな伊吹マヤの出番があまりにも少なすぎたこと。どの道,脇役には違いないので出番が少ないのは覚悟の上でしたが,あそこまで少ないとはなあ。完結篇では多少なりとも活躍して欲しいです。新キャラもサクラ以外は微妙な立ち位置ですね。彼らの登場に意味はあったのかなあ。
posted by 森山 樹 at 20:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想(映画館)
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