2013年06月16日

牙狼−蒼哭ノ魔竜

〈2013年映画感想11本目〉
牙狼−蒼哭ノ魔竜
2013年 日本 96分
監督:雨宮慶太
脚本:雨宮慶太
配給:東北新社
出演:小西遼生,久保田悠来,蒼あんな,螢雪次朗,柳原哲也,奥田ゆかり,影山ヒロノブ,藤田玲,山本匠馬,中村織央,渡辺裕之,松坂慶子

 特撮TVドラマ『牙狼』の劇場版第2弾映画です。とは言え,『牙狼』は本篇には全く触れておらず,前回の劇場版『牙狼 RED REQUIEM』以来ということになります。一応はTVドラマ版を鑑賞していなくても楽しめるように制作しているとのこと。勿論,本篇にある程度は精通していたほうが理解出来ることは間違いないのでしょうけれども。

 約束の地と称される異世界を舞台に繰り広げられる黄金騎士ガロこと冴島鋼牙の戦いが描かれる『牙狼』劇場版第2作目です。『牙狼〜MAKAISENKI』から直接続く作品とのことなので,やはりTV本篇を見ておいた方がいいことは間違いありません。自分はこのあたりは鑑賞後に様々な媒体を通じて補完しています。『牙狼』は現代社会を舞台としたダーク・ファンタジィ特撮という先入観があったので,純然たる異世界ファンタジィである本作品には聊か面喰ってしまいました。これはこれで悪くはなかったのですけれどね。ただ,やはり前作『牙狼 RED REQUIEM』同様の現代社会を舞台にした戦いを期待していた身としては当てが外れた感は否めません。勿論,事前調査をしていなかった自分に全ての責任があるのですけれども。物語はガジャリとの契約を履行する為に約束の地に鋼牙が降り立ったところから始まります。この約束の地の描写がたまらなく美しい。異世界らしく不思議で理不尽な展開が非常に好みであります。異世界への転移により鋼牙の装備である魔導輪,牙狼剣,魔法衣が失われるという事態にも説得力があります。そして,何よりもキリアやラウドといった約束の地に住まう異形の民の造形が素晴らしいのです。約束の地とは人間に忘れられたモノが集う世界ということが最終的に明かされますが,その切なさ溢れる雰囲気が印象的であります。勿論,特撮ということで激しい戦闘場面も随所に織り込まれ,気分を高揚させてくれます。約束の地の支配者である女王ジュダムや鋼牙を助ける謎の不思議な少女メル,それに敵とも味方ともつかぬ胡乱な存在であるカカシと物語を彩る人物もそれぞれに魅力的。物語がやや薄いのは気になるところですが,それを遙かに上回る異世界の雰囲気の酔いしれることが出来ます。これだけでファンタジィ映画としては成功と言えるのではないでしょうか。本篇に触れているとまた違った感想を抱くのかもしれませんけれども。

 主人公の冴島鋼牙役は小西遼生。冷静沈着で自制的な雰囲気がたまらなく格好いい。『牙狼 RED REQUIEM』の時にも感じましたが非常にヒーロー然とした人物だと思います。あまりに完璧過ぎて語ることがないくらい。黄金騎士ガロとしての異形の姿も魅力的であります。今作が冴島鋼牙に最後の戦いということになるようですが,やはり何とも勿体ない。その冴島鋼牙の相棒である魔導輪ザルバに声を充てるのは影山ヒロノブ。傲岸不遜な性格がその声に似つかわしく思います。約束の地での鋼牙の案内役メルを演じるのは蒼あんな。全身が青い肌の如何にもファンタジィでありますが,その性格も含めて可愛らしい。存在感を大いに発揮していました。そして,何と言っても欠かせないのが謎めいた存在であるカカシ。派手な衣装に軽妙浮薄な言動の中に見せる切なさや寂しさを表現する久保田悠来の演技が秀逸。本作において一番好きな登場人物かもしれません。相棒であるクロマルとの掛け合いも非常に楽しい。カカシも約束の地の住人ということでその正体が秘められています。彼の正体は容易に想像が付くのですが,その見せ方はお約束ながらやはり上手い。結構涙ものでありました。純真さと残忍さを併せ持つ悪役として鋼牙に立ちはだかる女王ジュダム役は松坂慶子。経験の浅い出演陣の中で流石の存在感を醸し出していました。如何にも特撮の悪役然とした衣裳も美しい。ただ,その存在意義がいささか微妙に思えたのは残念かなあ。魔竜と共に存在する説得力に欠けたきらいが否めません。その存在が宙に浮いている感があるのですよね。或いは彼女にも鋼牙との因縁を用意した方が良かったのではないでしょうか。

 『牙狼』としてというよりも異世界を舞台にしたファンタジィ特撮として楽しみました。物語としてはやや魅力に欠けることは否めませんが,それを遙かに凌駕する異世界観を堪能することが出来ます。また,切なさが溢れる結末も個人的にはかなり好み。現代社会を舞台にした前作の方が自分好みではありますが,これはこれで悪くないものを感じます。敢えて言うならば,『牙狼 RED REQUIEM』で強烈な存在感を見せてくれた烈花役の松山メアリの登場がなかったのが残念でなりません。尤も,この世界観だと完全に浮いてしまったことでしょうけれども。何はともあれ,特撮好きとしては存分に楽しめました。冴島鋼牙の物語はこれで終幕ということになりますが,新たな主人公を得て『牙狼』はまだまだ続きます。劇場版第3作目があれば必ず見ることになりそうです。
posted by 森山 樹 at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想(映画館)
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