2013年06月29日

ヒンデンブルク 第三帝国の陰謀

〈2013年映画感想12本目〉
ヒンデンブルク 第三帝国の陰謀
HINDENBURG
2011年 ドイツ 110分
監督:フィリップ・カデルバッハ
脚本:ヨハネス.W.ベッツ,マーティン・プリストル,フィリップ・ラゼブニク
配給:東映
出演:マキシミリアン・ジモニシェック,ローレン・リー・スミス,グレタ・スカッキ,クリスティアーネ・パウル,ハイナー・ラウターバッハ,ウルリッヒ・ヌーテン,ステイシー・キーチ,ヒンネルク・シェーネマン

 20世紀の航空史に残るヒンデンブルク号の爆発炎上事故を題材にした群像映画。元々はドイツで180分のTV映画として制作された作品です。それを110分にまとめて劇場公開したとのこと。劇場版で削除された70分の内容が如何なるものだったのか気になるところではあります。なお,映画パンフレットに『銀河英雄伝説』の田中芳樹が寄稿しているのが個人的には楽しかったです。

 飛行船ヒンデンブルク号の爆発炎上事故の真相とそれを彩る人間模様とを描く歴史ミステリィ群像劇。邦題からもヒンデンブルク号事故にはナチスが関与したというのが如実に分かるようになっています。邦題でネタばれをされたことにはちょっと閉口しましたが,個人的には結構楽しめた作品です。まあ,いろいろと問い詰めたい部分はあるのだけれど。物語の中心となるのはヒンデンブルク号の爆発炎上に至るまでの軌跡とヒンデンブルク号乗客たちの人間模様。ヒンデンブルク号設計技師のマーテン・クルーガーとアメリカの石油会社社長の令嬢ジェニファー・ヴァンザントの恋愛劇やナチス・ドイツから逃亡するユダヤ人のケルナー一家,或いはそのケルナー一家の娘ギゼラと米国人芸人ブローカの交流などが描かれます。このような飛行船内での人間模様が徐々に緊迫感を高めながら,レイクハースト海軍飛行場上空での爆発事故という終局に向かって行く構成が非常に面白い。物語としても起伏に富んでおり飽きさせません。基本的にはマーテンとジェニファーが主人公的な立ち位置となるのですが,それぞれの関係が交差して物語に深みを与えています。ヒンデンブルク号事故の真相は安直ではありますが,意外性を求める作品ではないから特に問題はありません。因みにヒンデンブルク号はツェッペリン社の博物館に保存されている設計図を参考にしたとのことで頗る現実感に富んでいます。その優雅な佇まいは非常に魅力的。だからこそ,その爆発炎上したときの衝撃は相当のものがありました。また,ヒンデンブルク号に仕掛けられていた爆弾を発見解除したにも関わらず,結局はセントエルモの火と呼ばれる自然放電現象によって悲惨な事故に陥ってしまうという皮肉さもたまりません。様々な人間の想いを飲み込みながら爆発炎上するヒンデンブルク号の姿が非常に印象的でありました。ヒンデンブルク号の爆発炎上事故という史実を題材に冒険やロマンス,或いはサスペンスといった要素を巧みに組み込んだ作品であると思います。歴史趣味者的にも冒険映画好きとしても存分に堪能することが出来ました。

 ドイツ映画ということもあって出演者は全く知らない人ばかり。逆に先入観なく楽しめることが出来たということも言えます。マーテン・クルーガー役のマキシミリアン・ジモニシェックはその濃い顔立ちが印象的ですが,なかなか精悍で格好良く見えました。但し,作中での活躍はいまいち微妙なのが残念。ヒンデンブルク号に仕掛けられた爆弾を探すという緊迫した状況にもかかわらず,恋に落ちたジェニファーとの情事にふけるというあたりには流石に違和感があります。寧ろ,マーテンの親友のアルフレートの活躍の方が印象的かもしれません。マーテンに掛けられた嫌疑を晴らしてくれたり,ヒンデンブルク号に仕掛けられた爆弾を発見したりと大いに働いてくれました。演じるヒンネルク・シェーネマンも正統派の男前って感じだったしね。ヒロイン役はローレン・リー・スミス。1930年代の衣裳に身をまとった姿が非常に印象的。冷めた関係だったとはいえ許嫁のフリッツ・リッテンベルクを殺害したマーテンと恋に落ちるあたりはいささか微妙な感じがします。禁じられた恋愛模様を描きたかったという意図は見えるのだけどね。そのジェニファーの母親ヘレン役のグレタ・スカッキは悪辣な印象が非常に良かったです。その末路はいささか哀れではありますが,因果応報ということなのでありましょう。また,脇役陣ではギゼラ・ケルナーを演じたアリツィア・フォン・リットベルクの可憐な美少女ぶりにたまらないものがありました。単純にベレー帽が似合う娘さんが好みと言うこともありますけれど。ギゼラとブローカの交流もいい味を出していたように思います。

 史実を題材にした冒険サスペンス色の強いミステリィ映画ということで堪能いたしました。やっぱり個人的にはこういう作品は大好物ですね。『タイタニック』とやや印象が被ってしまうのは仕方がないところなのかなあ。最終幕のヒンデンブルク号の爆発炎上事故の迫力は格別のものがありましたし,そこからもうひとひねりを加えた最終盤の展開も面白かったです。あれだけの悲劇を体験しながらも最終的にはふたりで笑いあえるマーテンとジェニファーの姿にはやや違和感を覚えますが,逆に悲劇を乗り越えて笑えるようにならないといけないということを示唆しているのかもしれません。何はともあれ,飛行船好きとして,世界史好きとして存分に楽しめた映画ではありました。この種の海外製TV映画がもっと日本でも見られるようになって欲しいものであります。
posted by 森山 樹 at 16:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 感想(映画館)
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