2008年01月02日

姑獲鳥の夏

姑獲鳥の夏
2005年 日本 123分
監督:実相寺昭雄
脚本:猪爪慎一
出演:堤慎一,永瀬正敏,阿部寛,宮迫博之,原田知世,田中麗奈

 DVDを買ったきり放置していたのだけど,『魍魎の匣』の予習を兼ねて見ることにしました。ちなみに邦画をきちんと見るのって実質初めてのような気がします。どこか,苦手感を抱いてしまうんだよね。洋画党だった母親の影響なのかもしれません。
また,≪妖怪≫シリーズ再読したくなってきたなあ。

 京極夏彦の原作を映画化した作品。原作は相当思い入れの深い作品なので,この映画化に関しては非常に危惧している部分はあったのですが,結論から言うとそんなに悪くもないかなあ,と。決してよくもありませんが。個人的にはそれなりに妥協しています。ただ,原作を読んでいない人にとっては分かりにくい構成であるのも事実でしょう。見る前提条件として,原作を既読のことというのは映画としてはどうかとは思います。
 配役には聊か違和感があります。これは小説を映画化したときには必ず生じる問題だとは思うのですが,思い入れの深い作品だけに尚更感じてしまいました。特に中禅寺敦子役の田中麗奈は違うんじゃないかなあ。確かに,快活で少年っぽさのある美人といえば,田中麗奈も該当はするのだけれど,原作を読んでいて敦子に抱いた印象とは隔意があるように思うのです。また,阿部寛の榎木津礼二郎も違うような気がします。宮迫博之の木場修太郎は雰囲気として悪くないんですが,惜しいことに上背がなさ過ぎます。勿体ない。一方で,京極堂こと中禅寺秋彦役の堤慎一は案外はまっているような。原作でも延々と続く京極堂の長台詞を自分のものとしているのは流石だなあ,と。永瀬正敏が演じる関口巽も猿顔で情緒不安定なところは原作のまま。そして何といっても久遠寺涼子役の原田知世は儚く幸の薄い佳人を鮮やかに演じています。なお,原作者の京極夏彦も片腕の傷痍軍人役で密かに登場しています。作中で明らかにされてはいませんが,当然のことながら水木しげるがモデルであることは間違いないでしょう。こういう遊びも悪くはないです。聊か,露骨すぎるきらいがないでもありませんが。
 あの分量の小説を2時間の映画に収めようということ自体がどだい無理な話なわけで,骨子はそれなりに残っているものの,かなりの部分が端折られています。その為に京極夏彦作品の最大の魅力である濃密な論理性が非常に希薄に感じてしまうのが残念な点。あまりにも原作が魅力的に過ぎて,その魅力を十分に生かし切っていないように思うのです。作中での時代は昭和27年ということになっていますが,その時代の息遣いもそれ程伝わりません。全体的な怪奇趣味は確かに好みではあるのですが,やはり原作と比較して物足りなさを感じるのです。従前から言われていた通り,完全に映像化することは到底無理だったということなのでしょう。それなりに手を尽くしていることは分るのですが,原作の愛好者の立場からするとはっきりと不満を覚えます。基本的に原作に忠実であることは認めるんだけど,映像としてそんなに面白みもありませんでした。
 不満はあるけれど,そんなに悪くはない作品という微妙なところ。原作を読んでいればという条件付きならば,楽しめるのではないでしょうか。配役に違和感を覚えるのは小説の映画化では避け難い部分だから仕方がありません。それにしても,密室事件のあのトリックはやはり反則気味だよなあ。個人的にはある程度納得できるんだけど,原作読んでいない人は呆気にとられてしまうのではないかしら。
posted by 森山 樹 at 18:16| Comment(2) | TrackBack(0) | 感想(DVD)
この記事へのコメント
レンタルして見たのですが・・・
私も同感です!!

> 原作を読んでいて敦子に抱いた印象とは隔意があるように思うのです。
> 阿部寛の榎木津礼二郎も違うような気がします。
> 京極堂こと中禅寺秋彦役の堤慎一は案外はまっているような。
> 永瀬正敏が演じる関口巽も猿顔で情緒不安定なところは原作のまま。

宮迫博之の木場修太郎は私は意外に良かったんですよね〜。
原作のままとは言いませんが、かなりはまり役だったかな〜と思いました。
原作付きの映画だと結構読んでいないと、
ストーリー展開にムリがある部分多いですよね。
こういうところはあの長いストーリーを映画にすると言うのが・・・・
難しいんでしょうね〜。。。
Posted by あっこ at 2008年04月12日 22:36
>あっこさん
宮迫博之の木場修は奈何せん上背のなさが気になりました。
雰囲気は結構よかっただけに勿体ないです。
原作を意識しすぎた結果,
却って構成に無理ができてしまった映画という印象ですよね。
もっと大胆に再構成してもよかったように思います。
そうしたら一層避難されることにもなりかねませんが(苦笑)。
原作の頸木から解放されるのは難しいですねー。
Posted by 森山 at 2008年04月14日 07:36
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